10代の頃から皮革業界に携わってきた西牧正晴さん。発信者と制作者の間を行き来しつつ、さまざまな側面から業界をサポートしている。その際に役立っているのが、レザーソムリエBasic(初級)の資格。プロフェッショナルとしての証を活かし、多くの取引先から信用を得ている。
皮革業界においてマルチな才能を発揮し、多彩な分野で活躍する西牧正晴さん。現在の肩書は、アドバイザー、クリエイター、ライター、フォトグラファー。業界内外から引く手あまたのフリーランサーである。
西牧さんが皮革素材にはじめて魅了されたのは、10代の頃だった。
「僕が革にハマったのは19歳のときです。アルバイトをしていた靴屋で革靴を扱い、その奥深い世界に引き込まれました。その後、革製品を扱う靴問屋、靴メーカー、ベルトメーカー、革靴の組合などで働き、2020年に独立しました」
サラリーマン時代にかかわっていた業務は、営業、広報、マーケティング、ブランディグと多岐にわたる。それぞれの業務を通じ、牛革からエキゾチックレザーにいたるまで、多種多様な革に触れて知識を蓄えていった。さらには、余技としてレザークラフトの技術も習得。革のオールラウンダーとして活動の幅を広げている。
西牧さんがレザーソムリエ初級の資格を取得しようと思ったのは、独立する数年前のこと。革に携わり情報を発信する立場の人間として、有用な資格だと思ったからだ。
「若い頃から長らく業界で働いてきましたが、革が誤ったネガティブなイメージで受け止められているな、と感じる瞬間は本当に多くて。業界内であっても、革が副産物であることを知らない人もいるくらいです。そんな中でレザーソムリエの資格を取得すれば、ポジティブな情報を発信する際に説得力が増し、業界のためになると思いました」
西牧さんは、革の持つポジティブな特色について次のように語る。
「素材としてテキスタイルやプラスチックよりも長持ちしますし、腐らず半永久的に使えます。わかりやすくいえば、サステナブルな素材ですよね。また、同じ種類の革でも一つひとつ表情が異なるので、製品になるときに唯一無二のものに仕上がります。とにかく奥が深い世界です」
そんな革の魅力をより広く伝えるために、西牧さんはレザーソムリエBasic(初級)資格試験へのチャレンジを決意した。
レザーソムリエBasic(初級)資格試験は、これまで身につけてきた知識を活かし初回で合格。事前に勉強する際には、公式テキストを活用した。
「僕自身は靴とベルトが専門だったため、鞄などについては知らないことも多くて。そういう意味では、あらためて勉強になることが多かったです」
次のステップとして中級の試験を受ける前には、皮革講座Professional(中級)を受講した。この場では多くの気づきを得たという。
「業界経験の長いプロフェッショナルな方たちが一所懸命レクチャーしてくれるので、とてもありがたかったです。ただ、内容は初級に比べやや難解で、レベルが高かったです。さらなる勉強の必要性を痛感しました」
西牧さんは今後、折を見て中級試験にもチャレンジする予定だ。
皮革業界と結びつきの強い西牧さんだけに、レザーソムリエBasic(初級)の資格を取得したことは瞬く間に知れ渡った。そして、メディアに登場する際にはその肩書を名乗ってほしいといわれる機会が増えたという。
「僕はいま、YouTubeチャンネル『モノ・マガジンTV』において『大人の工場見学』というコーナーを持たせていただいているのですが、そこに登場する際は、レザーソムリエであることを名乗ってほしいと言われました。やはり、革のプロフェッショナルとして説得力がでるのでしょうね。ほかにも、モノ・マガジンWebにて『レザーソムリエ・マキマキのゆったり革講座』という連載をやらせていただいたり、広告記事を書かせていただいたりする機会が増えました」
資格を取得することによって、ライターとしての信頼度が高まり、ビジネスチャンスが増えたと話す西牧さん。レザーソムリエになり、大いにメリットを享受できたようだ。
西牧さんは将来的に、発信者として革の魅力を広く伝えていきたいと考えている。
「もしできるのなら、小学生の子たちに教育の一環として皮革素材の魅力を伝えられれば理想的ですね。皮革素材の特性や持続可能性にはじまり、革靴の選び方や革靴とスニーカーのサイズの違いといったことまで幅広く伝えられれば、革製品を身近に感じてもらえるのではないかと考えています」
また、革を通じた社会貢献にも意欲的だ。
「革で靴をつくるとなると、膨大な残革が出ます。これらを捨てず有効利用して小物をつくるとか、残革でつくった商品の売上から数パーセントどこかに寄付するとか、そういった活動も視野に入れています。あくまで商品として、タダで配るのではなく、うまくビジネスに絡めていければと考えています」
自身のブランディグのみならず、社会との接点を意識して活動を続ける西牧さん。今後も革の伝道師として、さらに活躍の場を広げていくことだろう。